【提言】「人生100年時代」の特養ホームはどうあるべきか?〜現場が訴える2027年度介護保険制度改定への切実な要望〜

2025年2月4日、「ケア社会をつくる会」施設介護部会は、厚生労働大臣に対し、「人生100年時代に対応する特別養護老人ホーム(特養ホーム)のあり方に関する要望書」を提出しました

介護保険制度が創設されてから24年が経過し、特養ホームは制度改定を重ねる中で、その役割が大きく変化しています。本記事では、特養ホームの現場が直面する課題と、2027年度の制度改定に向けて強く要望されている事項について解説します。

特養ホームの現状:人生の最期を生き切る「看取り」の場へ

特養ホームの現状は、統計データからも明らかです。

  • 入居者の平均要介護度3.97
  • 認知症高齢者の割合(自立度Ⅱ〜M)75.3%
  • 死亡退居率67.5%

これらの数値が示す通り、特養ホームは今や「認知症」と「ターミナルケア(看取り)」を支援する、人生最期を生き切る場となっています

しかし、要介護度の重度化に伴い、全介助が必要な利用者が増え、職員一人あたりの介護負担は深刻に増加しています 。現場の職員は全力で対応しているものの、一人で抱える介護場面が増え、疲弊しつつあります 。この現状に対し、2000年の制度創設以来、長きにわたり職員の配置基準が見直されていないことが、最大の課題として挙げられています

2027年度改定に向けた3つの要望事項

「ケア社会をつくる会」は、高齢者の希望と幸せが見える制度改定が行われるよう、特に以下の3点について見直しを強く要望しています

1. 運営基準の大幅な見直し

現在、特養ホームの運営基準は多岐にわたり、職員が「やらなければならない業務」に縛られています。これが、利用者本位のサービスの実現を遠ざけ、集団ケアにならざるを得ない現状を生んでいます

現場の柔軟な対応を可能にするため、以下の見直しを求めます

項目
現行の課題と要望される見直し
施設サービス計画書
現在6表ある計画書の項目を見直し、2表へ簡素化、あるいは廃止を検討。状態変化が激しい認知症・ターミナル期の人に対し、多職種カンファレンスで柔軟にプランを変更できる体制を重視すべき。
契約書「入院について」
入院時の居室確保期間を、現行の6日間までから20日間までに延長する(重度化による入院長期化に対応)。
入居判定委員会
毎月1回から随時開催へ見直す。
事故対策委員会
月1回の開催を年6回へ緩和し、事故報告書の作成義務を緩和する(事故レベル「3」以上に対象を限定するなど)。

 

また、法定研修や委員会が増えているため、それらに参加・出席する時間を職員配置に勘案した体制にすることも要望しています

2. 加算の大幅な見直し

現在、特養ホームの加算項目は45、減算項目は9(2024年度改定でさらに加算が11増、減算が2増)にも上ります

運営法人は加算を取得しなければ経営が厳しく、その要件を満たすための事務作業(実践記録、会議、管理業務など)が爆発的に増加しています 。この事務量の増加は、かえって介護の質の低下を招いているのではないかという懸念が示されています

また、複雑な加算の仕組みにより、料金体系が当事者にとって理解しにくいものになっており、軽減対象者の負担増につながるという問題も生じています 。社会福祉法人の「地域福祉の向上」という本来の趣旨から制度がかけ離れないよう、加算制度の抜本的な見直しが強く要望されています

3. 職員配置基準の早急な見直し

利用者の重度化にもかかわらず、24年間も配置基準(3対1)が見直されていない現状は限界に達しています 。配置基準が見直されない結果、「手厚い介護をする施設ほど、職員の給与が下がる」という矛盾した結果を招いています

要望書では、2027年度の改定において、以下の配置基準の見直しを強く求めています

  • 介護職員3対1 → 2対1
  • 看護職員:100人あたり3人(配置基準)以上 5人(努力義務)へ

生産性向上への取り組み(介護ロボットやICTの導入)自体は賛成であるとしつつも、それを職員配置基準の緩和と引き換えにする考え方には強く反対しています 。これは、介護が「過酷な仕事」というイメージを助長し、若い世代の人材確保をますます難しくするためです

専門職としての誇りを持てる制度設計を

「ケア社会をつくる会」は、介護現場がこのまま疲弊し続けることになれば、介護の質が低下し、虐待の増加にもつながりかねないと警鐘を鳴らしています

2027年度の改定では、単に制度を「維持」するだけでなく、介護職員が「人間の命と尊厳を守る専門職」として誇りを持ち、やりがいを持って働き抜けるための体制づくり、そして社会的評価を高めるための制度設計が反映されることが強く求められています

人生100年時代、誰もが安心して最期を迎えられる社会を実現するため、現場の声に真摯に耳を傾けた制度改定が強く望まれます。

ブログに戻る